のんのんの無駄話

言いたいことを言いたいだけ言いたい

Frieder Berniusの指揮で歌ったときの話

おはようございますのんのんです

 

毎年のGWに東京ではTokyo Cantatという合唱のイベントが開催されています。かなり大規模なイベントで、海外からも数名指揮者を招待して、演奏会や指揮者コンクール、ワークショップなどを3日間(くらい)かけて行っています。僕も東京に来てから何年かおきに参加したり聞きに行ったりしているのですが、このTokyo Cantatのメインイベントは、海外から招待した指揮者に指揮をしてもらうクロージングコンサートだと思います。クロージングコンサートは3人の海外の指揮者が2つずつ合唱団を指揮して演奏するのですが、その合計6つの合唱団のうち半分くらいは一般公募のメンバーから構成されているので誰でも応募することができるんですね。

さて、みなさんはFrieder Bernius(フリーダー・ベルニウス)という指揮者をご存知でしょうか?Stuttgart Kammer Chor(シュトゥットガルト室内合唱団)の創始者であり指揮者である方です。シュトゥットガルト室内合唱団は、聞けばわかると思うのですがとんでもないくらい上手いやばい合唱団で、おそらく世界でトップクラスの合唱団だと思います。トップかもしれない。合唱をやってる方ならおそらく気付かずともこの指揮者またはこの合唱団の演奏を聴いていると思います。僕は一昨年くらいに柏葉会でラインベルガーの二重合唱のミサを指揮しているのですが、この曲を選んだ決め手になったのはベルニウス×シュトゥットガルト室内合唱団のCDを聞いたからです。中学2-3年生くらいの頃からベルニウスの存在は知っていて(その時はバッハばかり歌ってたためCDで知った)、指揮者をやってた頃はとりあえず彼の演奏を頭がおかしくなるほど聴きながらラインベルガーを頑張ってました。

その僕が尊敬してやまないベルニウス先生が去年のTokyo Cantatに招待されるということを知ったのは、柏葉会を引退してすぐのことでした。公募で彼の指揮で歌えるのは、公募の中で唯一オーディションのあるMTVEと言う名の合唱団だけだったのですが、どうしても乗りたかったので実力不足ながらオーディションを受けました。そして、奇跡的に合格した僕はめでたく彼の練習と指揮のもと歌うことができました。あーよかったよかった!

 

と、ここで終わるのもやぶさかではないのですが、流石にあれなのでベルニウス先生の練習や指揮の中でかなり印象に残ってたことがいくつかあるのでそれをお話ししたいと思います。

 

MTVEは海外の指揮者の指導を受ける前に、事前にある程度練習をしておきます。その後に4回くらいベルニウス先生の指導を受けてから本番に臨む、といった感じです。ベルニウス先生との初回の練習(だった気がする)で、彼はこんなことを言っていました。

This kind of songs, we  should be perfect.

記憶がややおぼろげなのですが、大体これであってるはずです。ベルニウス先生の言ったこの言葉があまりにも強烈で印象に残っており、Cantatの期間はずっと頭の中にありました。

いよいよベルニウス先生の練習が始まりました。世界一の合唱団(僕の個人的見解)の指揮者は練習で何をするんだろうとワクワクだったのですが、やったことは主に以下の3つです。

・母音の発音の修正

・指揮と合わせる練習

ロングトーンでビブラートをかけない練習

これを徹底的に何度も何度も繰り返して、繰り返してそのまま本番の演奏をしました。曲の解釈や歌う側の感情がどうとか音楽がどうとかはやらなかったです。曲の情報説明とかはあったんですけどね。しかし、本当にとにかく死ぬほど繰り返しやりました。なんてったってそれしかやってないわけですからね、飽きるほど(飽きなかったですけど)繰り返すわけです。

練習で何をやるかなんてのはここでは本質ではないんですが、このような練習を繰り返してると疲れてくるんですよね指揮者も歌う側も。そんな中、ベルニウス先生が公開リハの時にこんなことをおっしゃってました。日本語訳したので僕の解釈もやや混ざってますが大体以下の通りです。

「ヨーロッパのクラシック人口をご存知ですか?だいたい全人口の5%くらいです。大勢の人はこんなに素晴らしい曲(その時練習してた曲のこと)が存在することを知らないのです。私はプロとしてそれをみなさんに伝えるのが使命なのです。『こんなにも面白いものがこの世にはあるんだ!』と。だから我々は完璧に演奏しなければならないし、そのためには根気強く戦い続けることが必要です。私はそのような戦いが大好きです。何回も同じことを練習して申し訳ありません。でも根気強く戦っていきましょう」

プロとして、指揮者としての理想像というものを持ってる人は少なくないと思うのですが、それが現実として目の前に現れるという体験をしたことは普通ないのではないでしょうか。僕はベルニウス先生のこの言葉を聞いた時にそれを体験したと感じました。自分の中で非常に曖昧なものとしてばらばらに存在していたいわゆる「理想」(または理想のようなもの)たちが一つに結びつき、しかもそれだけではなくまんま目の前にいるのです。言葉ではうまく言い表せないのですが、語弊を恐れずに言えば自分が何になりたいのかを完全に把握できたような気になりました。

本番について特に語ることはありません。しかし最後に、観客からの盛大な拍手をうけながら舞台袖に戻り、ベルニウス先生が笑顔で一言だけ言った言葉を記してこの体験記を終わります。

 

Good composer!

 

 

 

はい

以上が昨年度僕が経験したとんでもなく素晴らしい出来事の記録になります。鬱陶しい書き方だったと思うんですけど僕は書いてて楽しかったです。本当はこういう体験っていうのは体験をしたものの特権なので書くのは良くないかなと思ったんですけど、まあ一年経ったしどうせブログ読む人少ないからいっかなと思って書いちゃいました。普段ベラベラ喋ってるしね!

この体験により指揮者として、音楽を営む者として、ひと回り成長した気がします。成長したというより道筋がはっきりしたというのが大きいです。結構考え方とかやり方とか変わりました。ちなみに当時自分がいたある環境から抜け出そうと決心したのもこの経験によるところが大きいです。

彼の発言は3つだけ抜き出したんですが、みなさんお気付きの通り、すべて一貫しているんですよね。最後の発言聞いた時はかっこよすぎて言葉が出ませんでした。尊敬はもちろんしてるんですけどただただかっこいい。ああいう風になりたーい!僕もいつか言いたいですGood composer!

今年は気になる指揮者がいなかったので参加してないんですが、MTVEに参加して本当に良かったと思います。みなさんもいつか参加してみたらいかが?(ダイマ)

 

ここら辺で筆を置きたいと思います。このブログのテーマは僕の言いたいことを言いたいだけいうことなので、読みにくいとおもうんですが許してください。もっと詳しく聞きたい人は直接ぼくに「ベルニウスの話しして!」とおっしゃってください(笑)

 

それではまたいつか